社長ブログ

収益還元法にたそがれの兆し

そこの君寝ないで!

バブルの崩壊以後の不動産業界にあっては、(言い過ぎかもしれませんが)それまで脇役であった賃貸管理や仲介の「仕組みが発展」して、賃貸管理から上がる収益が傷ついた不動産会社を持ちこたえさせたという現実があります。
仕組みの発展とは、オーナー獲得のノウハウ、原状回復のノウハウ、更新や退去に関するシステムや仕組み、家賃延滞に対する対処法、リフォームのノウハウなどです。
これらを総合的に網羅し補佐するFCや、数々のグループ(協会)もあわせて発展していきました。
あちこちで発展した仕組みを取り入れた不動産会社がしのぎを削り、大家さんの取り合いが始まっていました。そこに登場したのがインターネットです。これは「顧客獲得の仕組み」の発展です。
それまでの賃貸管理や仲介の仕組みは(言い過ぎかも知れませんが)管理会社が専任物件を持っていれば食べられるためのものです。大家さんがリスクを全部しょっているから成り立つ仕組みに他なりません。いくら空室が続いたとしても直接の持ち出しにならないほとんどの管理会社は、空室を埋める事に真剣に取り組んでいたとは思えないのです。(大家さん談)
悪いことに空室対策に比べて発展していった賃貸管理の仕組みは、賃貸物件数を増やすという結果につながり、さらに悩んでいる大家さんを増やしていきました。それでも空室が問題だと、口では言っても本当はそれほどの被害をこうむっていない管理会社は真剣に取り組んではいなかった・・・・・そんな時にインターネットは登場したのです。
インターネットの登場で一番先に影響をうけたのが実は大家さんです。正確に言えば、年を取り「インターネットなど無理」といって最初から避けていたオーナーさんの息子さんや娘さんです。
彼ら彼女らは、インターネットに取り組んでいない不動産会社に管理を任せることに反対しました。オーナーに向かって「空室はお金が入らないんじゃなくて、入るはずのお金が不動産会社の怠慢によって搾取されていることなんだ」と強行に訴えます。
それでもオーナーは(お金はあるし)長い付き合いの不動産会社と波風を立てることを嫌い、管理会社を変更したり、一般物件にしたりはしませんでした。息子や娘は(将来私たちがもらえるはずのお金を、怠慢な不動産会社に搾取されている)とさらに考え(ちょっと自分勝手)、俺の、私の時代になったら絶対あんな管理会社は替えてやると心に強く決心しました。
しかし空室はインターネットだけのせいではないのです。物件が多すぎることが根本的な問題であり、相対的に少ないお客様をいかに獲得するかを「真剣に考えている会社」か、そうでない会社かを選別する意味で最適なリトマス試験紙が、後から考えれば大家さんにとって当時のインターネット利用の最大の効果だったのです。
当たり前ですが真剣に考えている会社の代表は仲介専門の不動産会社です。彼らは空室を埋めることによってしか手数料を獲得できなかったからです。
このもっとも空室対策に真剣な会社たちによって不動産業界のインターネット利用は発展していきます。(顧客獲得の仕組みの発展)
従来からの価値観を持った管理会社たちもただ手をこまねいていたわけでは有りません。ホームページを作って大家さんたちにもアピールします。(大家さんにばかり向くから管理会社のネット利用は成功しないのです。大家さんが望む方向に向く意識が成功の秘訣です)
しかしそれほどの効果は出ません。自分でリスク(手間)をとってビジネスを行う習慣があまり無かったからでしょう。
一方消費者はだんだんにネットになれてきます。いつも利用するようになると、だんだん使い方が変わってきます。相場がわかり、物件の内容がわかり、物件もたくさんあることがわかってきます。従来のように「知らないお客」を前提にした顧客獲得の仕組みが崩壊していきました。
さらに追い詰められた管理中心の不動産会社は、毎夜毎夜脳みそに汗をかきながら新しいビジネスモデルを作り出しました。「大家に新しい物件を立てさせる」という一石三鳥のすばらしいビジネスモデルです。建てさせ(ここでがっぽり)、管理し(得意)、仲介する(新築だから楽勝)。
その上今まで通り、リスクは大家さんに付け届けです。
*同時期に発展を遂げた東横インも同じビジネスモデルです。(もしかするともっとえげつないですが)
しかしここでも根本的な問題を加速させることになります。お客様の数に比べて物件数が多すぎる問題は解決されるどころか、どんどんひどい状態になっていったのです。
数年がたち、さすがにリスクをつけ届ける地主さんが少なくなってきた頃、不動産投資ファンドがアメリカに遅れて日本にも登場します。REITです。
不動産REITが登場した頃は、余り話題にはなりませんでした。みんなお金が無かったからです。裏を返せば地主さんに新しい物件を立てさせるというビジネスモデルが発展したのは、不景気で信用収縮の中、お金が無くても担保を持っていた地主さんしか新規物件を建てられなかったことが原因かもしれません。
しかし幸か不幸か日本はバブルの後遺症から脱し、失われた10年を取り戻すべく景気が回復し、金融不安が解消され、リストラ中心から成長へと経営の舵を大きく切り返しました。
銀行にお金があふれ、高額所得者がバブル期の二倍にまで増え、リスクをつけ届けるのではなく、自前で物件を買うREITが登場したのです。REITの登場は街の不動産会社が地主さんをたらしこんで新規の物件を建てさせるなんてスケールでは有りませんでした。
莫大な資金力で当時まだ安かった東京や大阪などの大都市物件を買いあさりました。そんな時、言われ始めたのが収益還元法です。(やっとたどり着きました)
REITは自分で物件を買いはするが、リスクはみんなで少しづつ分担しましょうというのが基本です。たくさんの人たちがREITを通して物件の大家さんになるわけですから、スナックで札束積んで口説くわけには行きません。誰にでも納得できる証拠が必要になりました。そこで投資した金額が毎年何パーセントの利回りになるかを計算して、納得できる証拠としました。REITが登場するまでこの考え方は余り世間で話題にされませんでした。なぜなら収益は空室が想定通り埋まり続けるか、将来の売却処分価格が現在よりも高くないと意味が無いからです。
「いえいえそれもちゃんと計算済みですよ。」とREITの設計者はいえますが、たとえスナックで地主さんを口説いている従来の不動産会社の社員でも、空室や物件価格の崩壊を経験しているために、そこまでノー天気なことを言うのは気が引けます。
しかし、リスクが分散され(同じ仲間がいる)、一応実績もあり、さらに途中で転売も出来ることで(やばいとおもったら売ればいいじゃん)と考えた消費者、そして金融機関、諸外国のファンドがREITを買い始めます。
金融技術は主にロンドンで生まれ、ニューヨークで育っています。海外のファンドはやばくなったら誰よりも早く撤退して、自分たちにリスクをつけ届けられることは想像しないでもありませんが、同じ仲間もいることだし(日本人ばっかり)、REITは買い続けられました。
そして今サブプライム問題が発覚して、あっという間に諸外国のファンドがお金を引き上げました。日本では余り手を出すところがなかったから影響が少ないと伝えられていますが、そんなことは無いと思います。
資金が無くなる事は買い手が減ることと同じです。買い手が減れば価格が下がるのも時価である不動産では当たり前です。それでも店子が入っていれば収益は確保できますが、将来近隣地価が下がれば近隣にもっと「安く新しい」物件が登場するはずです。土地の取得価格が低くなり、収益還元法によって良い物件が安く供給できるからです。(笑)
結局同じなんです。
大家さんにリスクをつけ届けるビジネスモデルと同じだから結局崩壊するのです。将来また新たなビジネスモデルが登場するかも知れませんが、同じ運命をたどるでしょう。
リスクというものは分散することはできても、なくすことは出来ないのです。
なくならないということは必ず自分に跳ね返ってくるということです。
しかしリスクは同時に機会(チャンス)でもあります。リスクから逃げるこことばかり考えるのではなく、戦うことによってチャンスに変えられる会社だけが長く生き残れる会社やビジネスモデルだと思います。
インターネット時代の不動産会社を牽引していた賃貸仲介の会社を見ていても、生き残っていけるのは顧客獲得の仕組みをきちんと築いた会社でしょう。
顧客獲得の仕組みとは「お客様の支持」に他なりません。
お客様のいない店内での会議。社長が頭の中で考えている事。それをお客様の目の前にすべてさらしたとき、「そんな不動産会社が好き」といわれることがお客様の支持だと思います。


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Posted by 金丸 : Comment(0) | 2007.10.26.