メルマガを書いていた頃、メルマガが不動産会社向けでなく、不動産業界がわからない消費者に向けたものであったがために、読者から不動産業界についてのいろいろな質問をメールでいただきました。
そんな中に「どんな物件が良い物件なのですか?」というものが良くあり、「それはーー」と言葉に窮してしまうことがたびたびでした。
人にはいろいろな好みがあり、予算もそれぞれです。また物件にもいろいろなものがあり、立地や間取り、新築や中古、戸建てやマンション、都会や地方、さらにローンも多種さまざまです。
さらにさらに、世の中の景気の影響を受け、上がり目だったり下がり目だったり、今月はこの値段だとしても来月は同じ値段だとは限らず、あろうことか買ったり借りたりする人によっても値段は変わります。
そんな不動産業界にあって「どんな物件がいい物件なのか?」といわれても、明確な一つの答えなんて導きだされるわけが無いのです。っとしばらく答えていましたが、あるとき大変有名なお茶の先生にお茶を立てていただいたとき、その一つの答えが浮かんだように思い、それからは以下のように答えることにしました。
(この話の一部は昔メルマガにも書きました)
私はあこがれてはいますが、お茶はやりません。粋な人間ではないのですが、あるとき大変有名なお茶の先生に招かれてご馳走になったことがあります。
私は足がしびれながら、先生がお茶をカシャカシャたてているのをじっと我慢して、でっかい湯のみで少しづつまわしながら飲むのがお茶。くらいの認識しかなかったのですが、本式ではお茶をたてる前に「お道具」を見るという儀式が有ります。
それはそれは高そうな箱に入った湯飲みを(私には全然価値がわかりませんが)、畳の上におき、お客がみんなで見るのですが、落としたら大変だとばかり、みんな正座したまま前のめりになり、両肘をついて、そーーーと湯のみを10センチだけ畳から浮かせ、顔を近づけて、しげしげと眺め、良いお道具です。というのです。
私も落としたりしたらただじゃすまないと思って、そーっとそーっと持ち上げ、顔を近づけてしげしげと眺めたものです。(やっぱり良さがわからない)
さてお茶の会が終わり、銀座でみんなで打ち上げ(笑)で飲もうということになり、その席のことです。私はどうしてもあの湯のみをしげしげと眺める行為のわけを知りたくて質問しました。
「あのーほんっとに失礼な質問ですが、あの湯のみいくら位するのでしょうか?」(あとで誰かに言われましたが、本当に失礼な質問らしかったらしいです。すいません)
先生はそれでも優しく「お道具屋さんは値段をつけなきゃ仕方ないですから一応値段は有ります。あれは600万円くらいだと思いますよ」
「へーそうなんですか。ところであの湯のみはどういうところが価値があるっていうか、その技術的なところってどんなところなんですか?」(最悪の質問だそうです。本当にすいませんでした)
私はなんとか焼きだとか、何年ものだとかまるでワインのような価値の理由を話されると思っていたのですが。
「それは長いことずっと、たくさんの人に大事にされたからです。」
「え」
「長いことずっと、たくさんの人が大事に大事に扱ったからその大事にした価値が今の値段です」
たとえば3000万円の物件には、それなりの材料が使われます。同じ値段でも、職人が一生懸命吟味した材料と、そうでない材料には差が出ます。材料を使って建築する職人も、一生懸命立てた物件とそうでない物件には差が出ます。
不動産会社も一生懸命お客様のために努力して探した物件と、儲かるからと提案する物件では差が出るものなのではないでしょうか。
良い物件とは、大切に作られた物件であり、その物件の価値をわかる不動産会社から購入したり、借りたりした物件だと思います。
だから良い不動産会社を見つけることが出来れば、良い物件にめぐり合えるんです。
あれからは、今日までそう言い続けている私です。
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Posted by 金丸 : Comment(1) | 2008.2.5.
One thought on “良い物件とは”