私は小さい頃から大変本が好きでした。
小学校二年生の時に学校に図書館があることを知り、ベートーベンの伝記を読んでから「伝記コーナー」を全部読むと心に決め、5年生の時に全て制覇したのですが、最後に読んだのが「イエスキリスト」の本。夏休みに読んでいた私を見て母親が「あんた頭おかしいんじゃない」といったのを良く覚えています。(別に宗教的にいったわけではありません)
その時に「だって図書館の伝記コーナーを全部読むって決めたから仕方が無いんだよ」というと、「あなた伝記ばっかり読んでるの?」と聞くので、「そうだよ」
「だったら少しお金あげるから、本屋さんに行って好きな本を買ってらっしゃい」
これが母親の悲劇の始まりでした。自転車に乗って田無というところまで行き(当時、自分の住んでいる保谷というところにはあまり本屋さんがなかった)、丸岡書店という本屋さんを見つけました。今では本屋さんは総じて大型書店になりましたが、当時は小さな書店が多く、その中では丸岡書店は大きな方でした。初めて本屋さんに入った私は、いろんな種類の本があるのに感動してこう思ったのです。「この本屋さんの本を全部読んでやる」
そしてその日から丸岡書店通いが始まります。一日に一冊ずつ買って読むのです。母親にしたらたまったものでは有りません。毎日毎日お金が掛かるのですから。それでも教育上、本を読むなとは言いにくい母親はこんな攻撃をかけてきました。
「字の小さな本を買いなさい」
これが今でも文庫本しか読まない私の原点です。そして字の小さな本は一日では読めません。それでも子供ですから、野球の練習くらいしか用事はありませんし、一日で読むのが二日になったくらいです。まだまだ我慢できない母親は新たな攻撃をかけてきました。
「ゆっくりよみなさい。頭に入らないでしょ」
そんなわけで私は本好きでありながらあまり読むのが早くないのですが、これほど好きだった本が読めなくなったときが有ります。たぶん18歳くらいの時だと思うのですが、学習塾の先生の高校時代を描いた「高校放浪記」という本を読んだときです。今は横浜でセンチュリー21に勤める吉川君が紹介してくれた本です。
この本は上下二巻あるんですが、切なく、悲しく、胸が締め付けられるような思いに耐え切れなくなって、上巻を読み終えたときにもう読めなくなったのです。そしてそのあまりのショックのせいで、その後一年くらい本を読むのをやめました。
二十歳になり、また本が読めるようになったとき「村上春樹のノルウェイの森って胸が締め付けられるような本だよね」と友達の誰かに聞いたとき(またあんな思いをするのは嫌だ)と日本NO1の作家の本を読むまいと決心しました。
そしてノルウェイの森は400万部以上売れた、「世界の中心で愛を叫ぶ」に抜かれるまで、日本で一番売れた小説となりました。
今1Q84が大変な話題になり、再び村上春樹さんが脚光を浴びていますが、本屋さんでその本を見るたびに、私は自分で勝手に決めた禁断の書、ノルウェイの森が読みたくて仕方がなくなりました。そして先日勇気を出して買ったのです。
いやーすばらしい。毎回ノーベル文学賞をとるんじゃないかといわれるのが良くわかります。
そして自分が大人になった(歳をとった)のがわかります。ハゲでデブにもなりましたが、こういう本をやっとちゃんと読めるようになった自分が少しうれしいです。
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Posted by 金丸 : Comment(6) | 2009.6.16.
6 thoughts on “ノルウェイの森”