実は「増上寺」という名前には一生忘れられない思い出がある。
数年前、会社が資金繰りで苦しい時代があった。
「後10日で決済できないと、もうだめだ」と言うぎりぎりの時、
最後の望みを銀行の融資に託していた。
当時の担当者、永平寺君が結果を携えて1週間前にやってきて
「審査に落ちました」
もうこれでだめだと、何の当て所もないけど
うな垂れる彼に「もういいよ」と言った。いや、それしか言う言葉がなかった。
後で聞いた話だが、永平寺君はうちのために上司と大喧嘩までしてくれたそうである。そんな彼を責める言葉なんてない。
何の当てもなく諦め気分が漂う中で、彼が突然立ち上がった。
「そうだ!市役所がある!」
それだけ叫んで彼は会社から飛び出していった。
意味も分からず取り残された。
だが1時間後、永平寺君は市役所の保証融資申請の手続きをして帰ってきた。
後は書類を出せば通る、その書類を手にして。
そのおかげで立ち直った。そして今の我が社がある。
この子を一生忘れないと心に決めた。
いつか必ず彼に恩返しをしたいと、今日までやってきた。
いい会社になるのが恩返しだと、一生懸命やってきた。
そんな彼のことを一生忘れられない。忘れられるわけなんかない。
じゃぁ、一生忘れられない名前は「永平寺君」じゃないかって?
実はそんな恩人の彼を、名前を覚えられない私は、
「増上寺君」
と1年半も呼び続けていたのでした。
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Posted by 金丸 : Comment(0) | 2006.2.2.