私の若い頃の話で、なぜかみんなに顰蹙を買うことがあります。
私は高校時代、主に自転車通学をしていました。
何事にもめんどくさがり屋だった私は、雨の日に傘をさしながら通学するのがどうにも合理的じゃないと思っていました。
そんなある夏の日、みんなでプールに出かけました。着替えるのが面倒くさいので洋服の下に最初から水着をきて出かけるのですが、水着を着ているとき私の頭の中で何かがスパークしたのです。
(雨の日で、且つ学校でプールがあって、そして夏なら・・・・。水着を着て自転車に乗って登校すれば・・・・傘をささずに済む。制服はビニール袋にでも入れて、学校に着いたら着ればまったくぬれずにいけるし、プールの時間に着替える手間も省ける。最高のアイデアだ!)
そしてある日実行したのです。
ところが海パン一丁で自転車(ママちゃり)に乗る私をみて、街ゆく人たちが爆笑するのです。中には指差して笑っている人もいます。どうして大人たちはこんな合理的な方法を笑うだけで理解できないのでしょう?(なぜか同級生も他人のフリ)
あれから20数年。
今はなぜだかわかります。(笑)
さて先週のことです。
東京地方は朝から雨でした。
たまたま家族全員がいない朝でした。
少々遅く7時に目覚めた私は、何の気なしに窓の外を見ると雨が降っています。
(そういえば昨日傘を買ったけど、忘れてきちゃったな。でも車だから関係ないか)
そしてふと車のほうを見ると・・・・・車がない。
実は車は会社に置きっぱなしだったのです。
会社へは、車なら30分ですが電車だと1時間かかります。
あせった私は大急ぎで着替え、玄関を出ようとしたとき・・・・傘がない。
傘が一本もないのです。(どうしよう)
どうしようもありません。(ええーい)
雨の中を駅に向かって飛び出しました。運よく雨はそれほど強くはありませんでしたが、さすがにぬれてきます。(駅まで遠い)走ろうとしても雨の日の歩道は傘をさした通勤する人たちで一杯です。追い抜いてゆくことができません。びしょぬれになりながら小走りに駅へ向かう私は、恥ずかしさもあり何とか信号のたび追い越そうとしますが、みんなの傘が邪魔になって追い抜くことができません。
信号を待っているびしょぬれの私。恥ずかしくて仕方ありません。そのとき、横にいた中年のおじさんがこちらを見て、「ふっ」と笑ったのです。
私の心の中の恥ずかしさが、怒りに変わりました。(少しは傘を差し出すくらいのやさしさはないのか!)そしてそのおじさんをにらんでいるとき、20年ぶりに私の頭の中で何かがスパークしたのです。
♪と・か・い・では
信号が変わっておじさんが歩き始めました。私もそのすぐ後ろにぴったりついて歩き始めました。
♪じ・さ・つ・する
私の声はだんだん声が大きくなります。
♪わ・か・も・のが・・・・ふ・え・て・い・るー
♪だ・け・ど・もー もんだいは、今日の雨―、傘がないーーーーーーーーーーーー
おじさんはまだ無反応です。
さらに私は大きな声で
♪いかなくちゃ 君に会いに行かなくちゃ 君の町に行かなくちゃ、
♪か・さ・が・な・いーーーーーーーーーーーー
ここでおじさんの傘にわざとぶつかりながら追い抜く。
♪つめたーい雨が、今日はこころにしみる。君の笑顔なんて、考えられなくなる♪
♪それは・・いい、こ・と・だ・ろーーーー♪
20年前とは違って今度は笑う人はいません。私は堂々と「傘がない」を歌いながらびしょぬれで駅へ向かうビジネスマンです。誰になんと言われようと結構。
駅に着きました。まるでプールに飛び込んだような状態です。そしてまた心の中で何かがスパークしました。(このままプールに入ったら合理的だ)
今度は20年もかからず理解しました。私は馬鹿です。
Facebookアカウントをお持ちの方は、こちらからコメントをどうぞ
Posted by 金丸 : Comment(0) | 2006.9.18.