社長ブログ

埼京ホームの里中さんから質問をいただきましたので、私なりの考えを聞いてください。
本年日経新聞が自信を持って値上げに踏み切れたのは、インターネット時代(情報化時代)における、マスメディアとミドルメディアの生き残り方の違いによるものではないかと前回書きました。
少し繰り返しになりますが、代表的なマスメディアである大手新聞社の記事は、マス(大衆)に向けて発信しているので、広い範囲を網羅しなければなりません。紙面や記者には当然キャパシティーが有りますから、広い範囲を網羅するということは、記事の内容が広く浅くならざるを得ないということです。
この広くて浅い記事がインターネットの情報に飲み込まれているのが、現在マスメディアを苦しめていると考えるのです。
一方で日経新聞は経済専門誌ですから(文化欄もなかなかですが)、マスメディアに比べればずっと専門的であり、記者もその取材範囲が限られているために深堀した記事を提供することが出来ます。上場企業の部長職以上の移動情報が全て掲載されているところなんか典型的です。
この事がインターネットで溢れる情報に負けない。というより、これだけ情報が氾濫しているのに「すごい」と読者に思わせ、値上げをしても(たぶん)部数が落ちないと思うのです。
よくお昼に仕事の打ち合わせをしていると「今朝の日経に載ってた記事だけど・・・」みたいな会話がありますが、「今朝の読売に載ってた記事だけど・・・・」なんて言葉は聞いたことがありません。朝日や読売の記事を話題にするなら「今朝の新聞に出てた記事だけど・・・・」となってしまうのが典型的な事象です。
さて、この現象が不動産業界の手数料減額となぜ結びつくかというと。まず西京ホームの里中さんは現在ベストセラーになっている「フリー」クリスアンダーソン著(あのロングテールを提唱した方です)を買って読んでください(笑)
この本は大変貴重な新しい価値観をたくさん提供しているのですが、この中に「潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる」というものがあります。
私にとって潤沢な情報とは、不動産物件情報に他なりません。この業界で長く暮らしている方にとっては、物件情報が不動産会社の店頭か、広告でしか発信されていない時代に比べれば、消費者も便利になったな程度にしか感じられないかも知れませんが、消費者の立場から見れば、「ポータルサイトに同じ物件情報がたくさん載っている」ことや、「いくつものHPに同じ物件情報が掲載されている」ことは、まさしく潤沢な情報なのではないでしょうか?
だから無料になりたがるのです。これが手数料減額の本質だと思います。ここの所を業界内での競争のせいだとか、一部の不届きな不動産会社のためだとかと考えると、将来を間違う気がするのです。
公正取引委員会さんなどが、表示規約にのっとった正しい物件情報を掲載するよう一生懸命指導を始めていますが、これにのっとって情報を掲載しても、潤沢な情報には変わりはありません。
きれいな写真やきれいな間取りを掲載したとしても、現況優先の不動産の場合は差別化にはならず潤沢な情報の中のホンの少しの違いかもしれません。
これらは決して無駄と言っているのではありませんが、まだちゃんとしている不動産会社が少ない時代だからこそ、効果的なことだと思うのです。
では消費者が考える不動産会社の希少な情報とはなんでしょうか。それこそ表示規約にいのっとった物件情報や写真や間取りだけではわからない情報なのではないでしょうか?
地域に根ざした不動産会社だからわかる物件の情報。(建設した会社、近隣の環境、近所の住人、学校のレベルなど)
長年不動産会社に勤めているからこそわかるプロとしての情報。(ローンの組み方、銀行の選び方、万が一の時の処分の方法、家賃を滞納したらどうなるか、大家さんの人柄など)
不動産会社とその社員自身の情報。(交渉をどれくらいする気があるのか。どんな社長。どんな社員。どんな歴史を持った会社。私の出身地。私の人生。私はこれからあなた(お客様)とどんな関係を結びたいかなど)
本当の情報であることが最低条件ですが、これらの不動産取引にまつわる様々な情報こそが希少な情報だと思うのです。つまり日経新聞に見るミドルメディアの情報と同じです。専門家だからわかる深堀された情報。
現在ではブログやツイッターなどで、様々な形でこれらの情報を発信している会社が増えましたが、いまだ個人の属人的な能力に任されているのが現実であり、会社として仕組み化できているのは大変少ないように思います。
不動産物件情報が潤沢な情報であると感じている消費者は、これらの情報を提供してくれる不動産会社の言葉を、「稀少な情報」だと考え、その結果手数料は高くなりたがることによって、手数料減額の波に飲み込まれなくなると思うのです。よく私が言うリピートや紹介も、知り合いだからこそこのような情報が伝わりやすい関係となり、同様に手数料減額の波から逃れられると考えています。
これが日経新聞の値上げが不動産手数料減額を防ぐ解になるかも知れないという考えです。
里中さんのお仕事に少しでも参考になれば幸いです。


Posted by 金丸 : Comment(7) | 2010.2.13.

 更新しないブログに毎日のように見に来てくださる皆様、ありがとうございます。
ご無沙汰しております増上寺です。
 社長、コメント読みましたか…
「あ、読んだ…」
 書かないわけにはいきませんよ。里中さん20回も読み直したって。
 書かないと。書かないと!
「か、書く!」
 他のスタッフに「社長のブログ楽しみにしてるんです。更新しないんですか?」と言わせてプレッシャーをかけたり(見破られたけど)、視線で無言のプレッシャーをかけては「すみません。更新します」と言わせてみたりとあれこれ画策してきた増上寺ですが、やはり一番は「楽しみにしている読者」さんのお言葉ですね。社長、がんばってください。 愛よりむしろ更新をお届けしてください。
 更新を心待ちにしていただいている皆様、
あたたかいプレッシャー励ましのコメント、お待ちしております。


Posted by 増上寺 : Comment(2) | 

年末の討論系のテレビ番組で、「デフレ」が日本経済の問題の中でも一番重要なことなのではないかという意見がたくさんあり、(なるほどなるほど)と聞いていたのですが、そんな世の中を尻目に日経新聞が新年から160円に値上げされました。
昨年まで140円でしたから、なんと一気に15%もの値上げです。
昨年は私の好きな「夕刊フジ」も120円から130円に値上げされたのですが、こっちは経営が苦しいから(すいません)だと思うので仕方がないのですが、日経は違うと思います。
新聞やテレビの苦境が伝えられるようになって早1年。その中でも日経だけは異色のようです。つまり自信を持って値上げしたように思えてならないのです。
これは日経が経済専門誌であることが原因で、インターネットが進んだ世の中では、マスメディアの崩壊が進み、ミドルメディアが勃興するという現象を端的に表していることだと思います。
今更あえて言うことではないかもしれませんが、新聞好きの私は朝日や読売の記事がネットで見れる記事ばかりになっている事を憂慮しています。つまり共同通信などの配信記事をそのまま掲載しているのが多すぎるのです。
今までネットがなかった時代は、朝日の読者は朝日しか読みませんでしたから、そのことに気がつきませんでした。しかしこれだけ情報が氾濫していると、YAHOOのニュースなどで大抵の記事は読んでしまいます。そんな読者がせっかくの紙面で同じ記事を読んだときの幻滅感といったらありません。
アメリカなどではGoogleが利用されていますので、Googleニュースなどで検索すると同じ記事が数千も出てくることが頻繁に起きているそうです。そしてその内容は全てがほとんど同じ。この事がアメリカの新聞社を苦しめ、地方紙の倒産を誘発しています。
こんな時代に暮らす読者が求めるのは、独自の情報。つまり情報を本当に発信している本人の記事ということになります。
経済専門誌である日経はそんなことに気づき、自身を持って値上げしたんでしょうね。
不動産会社の皆さん。そろそろ独自情報の大切さを意識したほうがいいかもしれません。(きれいな写真とか間取りではありませんよ)
日経の値上げは不動産業界で言う、手数料値下げに抵抗する解なのかも知れないからです。


Posted by 金丸 : Comment(5) | 2010.1.8.

明けましておめでとうございます。
昨年を振り返ってみると、新幹線に108回、特急に37回、飛行機に11回乗りました(飛行機嫌いです)
電車にはほとんど毎日のり、車にはほとんど乗りませんでした。
合わせてウーロン杯を3000杯、生ビールを500杯、日本酒を20升呑み、日本中のワタミを訪ね、数々の酒造メーカーの売上に貢献いたしました。
不動産会社向けの講演は120回行い、本を書くために25回徹夜をしました。
4年間通った歯の治療が12月でひと段落し、年末には「24」を徹夜で見ました。そんな09年だったのです。
さて今年はどんな年になるのでしょうか。
昨年拙著が発売された事も影響していると思うのですが、ここの所、不動産業界でリピートや紹介に目を向ける人が増えたように感じますし、あちこちでそんな文章を見かけるようにもなりました。
少しは影響を与えられているのかもしれない。そんな風に思いながら今日もウーロン杯を飲む私です。(既に50杯目)


Posted by 金丸 : Comment(6) | 2010.1.5.

前回ちょっと製造業の悲しい現実を書きましたが、そのまま年を終えるのはなんだかセンチメンタルすぎるので、最後にロマンチックな話で今年を締めようと思います。
日本の製造業がどんどん伸びる市場や途上国を意識し、国内は二の次になりかかっているのは事実です。そしてその業種が、今まで日本を支えていたといわれる自動車産業などであるのも事実です。しかし、目を伏せてばかりいる必要はないと考えるのは、過去の産業革命が起きたとき、最も時代の主役になった産業は「インフラ」だったからです。
実は産業革命が起きたとき、アメリカでは横断鉄道が作られました。シベリア鉄道もちょうど同じ時期です。パナマ運河も同じ時期です。
時代が大きく舵を切るということは、前提となっていたインフラが過去のものになり、新しい仕組みに置き換える必要があるということです。
東西冷戦の終結、アメリカ単独覇権時代の終焉、そしてインターネットの登場。これらが複雑に絡み合って、今本格的な構造変化が起き始め、そしてインフラが新しく整備される時代がやってきそうな予感がするんです。
小さなところでは、固定電話というインフラが完全に淘汰されましたし、駅で切符を買うこともなくなりました。銀行の窓口で振込みをすることもなくなり、今の若者はテレビを見ずにユーチューブを見るから、CMで稼げなくなったテレビ局は赤字になりました。新聞の折り込み広告もHPには情報量と敏速性で勝てないため、広告効果がなくなりました。
ただこれらのことは時代の本当の変化である「インフラの交代」の前触れと考えるべきです。
韓国では首都移転が始まりましたし、4大河川の整備という国家プロジェクトが動き出しました。アメリカでも高速鉄道(新幹線かも)の整備計画が本格稼動、ブラジルでも同様です。中国では既に時速350キロで営業運転する高速鉄道が(武漢から広州)開通寸前です。
原子力発電所は地球環境との絡みで、改めて大量に建設されるようですし、電線網は世界中で再構築されるようです。ここにはGoogleでさえ参入しています。(早稲田大学では来年原子力工学科が出来ます)
さてそんな時代の日本ですが、実は原子力発電を行うための「お釜」(制御棒があるところの外壁)は日本でしか出来ません。また、原子力発電所自体を作る総合メーカーは日本の東芝連合、日立連合、フランス連合が世界市場を握っています。
鉄道にしたってそうです。新幹線のレールには60キロレールというものと、80キロレールというものがあるのはご存知でしょうか。60キロレールは他の国でも作れるのですが、80キロレールはいまだ日本でしか出来ません。ちなみに東海道新幹線の場合、東京から岡山までが80キロレール、岡山から博多までが60キロレールです。だから岡山を過ぎると揺れがひどくなるのです。(かわいそうに、西京地所の平田専務)
ロケットや飛行機などの航空産業も同じです。日本は戦後政治的なこともあり、航空機産業はほとんど部品としてしか関わらず、宇宙航空についても遠慮がちに行っていました。
しかしこの分野は本当に日本が強い分野です。それは日本が世界を席巻している製品を見れば明らかです。
世界の工業製品の中で最も部品点数が多いのは1位ロケットです。2位航空機。そして3位自動車、4位複写機です。お分かりでしょうか。3位も4位も日本が世界市場を席巻しています。たまたま政治的に宇宙航空に手が出せなかったから、市場で勝てていないだけだったのです。本格的にやれば間違いなく日本はトップクラスになるはずです。それはメカが主流の商品を作るには、生産技術という技術が不可欠であるからです。生産技術とは、良い製品を早くたくさん作る技術のことです。この技術力が高いのは日本人の特性です。だからこそ、自動車でも複写機でも日本は世界を席巻したのです。
その証拠に完成品としては出ていませんが、既に日本の技術は航空機では大変な存在感を示しています。ボーイングの旅客機の主翼はその半分以上を三菱重工が作っているのをご存知でしょうか?
その三菱が新しい旅客機を作ろうとしているプロジェクトが始まっています。中距離の中型機ですが、とうとう本格的に市場に参入する気運が日本の産業界だけでなく、国民の意識として現れた結果でしょう。
こんな風にインフラが変わる時代に、日本の生産技術力は世界でその存在感を発揮するのです。まだしばらくは悶々とする年が続くかも知れませんが、こんな風に日本には技術があり、そのことがまた日本に復活をもたらすと思います。インフラが変わる時に勝つ企業は「技術革新」を具現化させることが出来る技術を持った企業です。
営業系の会社なら「営業革新」ということになります。不動産会社は新しいインフラを創り上げる営業革新を、製造業で言う技術革新と同じように目指してください。そこにはお金だけじゃなく、達成感も満足感もある新しい世界が待っているはずです。ではみなさん来年もよろしくお願いします!


Posted by 金丸 : Comment(7) | 2009.12.25.