社長ブログ

明日は岡山に行く予定ですが、今もって何時から講演をするのかわかりません^^)おかげで何時に家を出ればいいのかもわかりません。
たぶん講演は午後だとは思うのですが、当社のコンサルタント斉藤寧敏君から時間の連絡がないからです。
今さっき電話もしてみたのですが通じません、たぶん牛丼を夫婦で食べてるのでしょう。宮越君にも電話してみようとしましたが、たぶんラーメンを食べてると思うのでやめました。
上司である斉藤達哉君に電話する手もありますが、ちょうど自転車に乗っている時に電話して、転んで骨でもおられたらしゃれになりません。
とにかく早めに出るしかありません。
ps:あさっては生まれて初めて徳島に行きます。


Posted by 金丸 : Comment(3) | 2007.3.5.

朝日新聞にこんな記事がありました。あっちでも、こっちでも何か起きるとデータベース化が進みます。 

耐震強度偽装やガス給湯器による一酸化炭素中毒など、住まいの安全にかかわる事件事故の続発を受け、国土交通省は07年度から、個々の住宅本体の改修や設備機器の点検などの履歴情報を蓄積するデータベース作りに乗り出す。今後3年かけてまず業界統一の情報登録・管理システムを整えたうえで、データを集め、欠陥製品のリコールや住宅売買時の情報提供に活用する。住宅のトレーサビリティー(追跡可能性)を高め、消費者の保護と中古市場の活性化をめざす。
 国交省によると、情報システムの開発と普及は、同省外郭団体の財団法人ベターリビングと住宅金融公庫(4月から独立行政法人・住宅金融支援機構に改組)が主体となり、同省が補助する。
 データベースには、戸建て住宅やマンションを新築した際の設計図や施工に関する情報のほか、耐震診断やリフォームなど改築、修繕、点検の情報を蓄積する。住宅性能表示制度に基づく耐震性や防音などの評価を登録すれば、住宅の価値の客観的な把握にも役立つ。
 給湯器やエレベーター、火災警報器など、住宅に備え付けられた設備機器の製造番号や修理記録の情報も登録する。どの家にどの機器があるか分かっていれば、製品の欠陥で回収修理が必要になった時、メーカーは速やかに対応できる。
 住宅の柱やドアなどの部材、設備機器類の情報の登録方法として、国交省はICタグ(電子識別票)の利用を念頭に置いている。ICタグからは、製造番号や取り付け日などの情報が微弱な電波で発信され、読み取り機で受信した情報をコンピューターに蓄積する。
 住宅機器でのICタグ利用による履歴情報システムは、ベターリビングが今年度に開発した。今月下旬から、火災警報器について、都市再生機構の共同住宅63万戸に取り付ける分の登録を始める。今後は、ガス給湯器など生命・財産の安全にかかわる機器類に活用を広げていく方針だ。
 日本の住宅市場は新築住宅に偏り、中古住宅の流通シェアは03年度で13%。米国(78%)や英国(89%)より大幅に低い。中古住宅の流通が広がらない理由として、改修や修繕など履歴情報の不足が指摘されてきた。政府は15年度までに中古住宅の比率を23%に高める目標を掲げている。


Posted by 金丸 : Comment(1) | 2007.3.2.

最近の東京都心の地価の上がりかたは、まるでバブルを彷彿とさせる様相です。しかし、今日の日本経済は割りと冷静にその状況を眺めているように見えます。
地価が上がり、企業所得も最高益を更新し、2000万円以上の収入のある世帯の数がバブル期の2倍を超え、それでもあの時の熱狂的(お祭り的)な雰囲気は感じられません。
これはひとえに、バブルの理由がはっきりしているからに他なりません。
地価が上がったのは主に東京の都心です。
実は東京都の都心では、2000年頃に景気回復策として建築基準法が改正されています。同じ土地に大きな建物が建つようになったのです。
需要がある土地で建ぺい率が上がれば、そりゃ土地の値段は上がります。
これが超高層マンションを生み、バブル時に比べれば相対的に広い物件が安く供給され、お客がつき、取引が活発になり、結果として地価の上昇を促しました。
そんなところへ、不動産投資信託の登場です。不動産投資信託とは、幅広い投資家から資金を集め、不動産物件に投資することによって、そこから上がる収益を分配するファンドのことですが、超低金利時代で資金の運用に困った機関投資家(地方銀行や生命保険会社、損害保険会社、年金基金など)が、利回りを求めて都心の物件に殺到しました。
ファンドは投資ですから、投資家は基本的にいつでも売り逃げることが出来ます。そこが一般消費者が自分の財産をかけて物件を買うことと違い(ただし市況が悪いときには、安値で売却せざるを得ないので、全然損しないわけではありません)、勢いづくと今のようにバブルになるのですが、前回の時と違い一般消費者や街の不動産会社の多くは参加していませんので、もし崩壊したとしても社会的にそれほど影響はないと思われます。
バブルの本当に怖いところは、一般消費者や中小企業がこの流れに巻き込まれたときです。
それではなぜ一般消費者や土地取引に疎い中小企業が、巻き込まれてしまうのでしょうか?
ここに銀行の融資姿勢があります。
一般的な企業の場合、儲かっていれば割りと誠実な商売を行うことが通例ですが、銀行の場合、儲かれば儲かるほどだんだんまずい方向に向かう性質があります。これは「お金」が商品であることが原因だと私は思っています。
10年ほど前の銀行は、収益のある優良な企業向けの貸し金でさえ引き上げを行っていました。(貸しはがし)この頃の銀行の目標は自己資本比率。自己資本比率の低い銀行は財務省や金融庁につぶされたからです。
銀行の場合、貸し出し金が財務諸表上は負債と判断されるため、自己資本比率(経営の安全性を確認する指標)を高めるためには、貸し出し金を削減するか、利益を上げるか、資本金の額を上げるしかありません。そして一番やりやすい、貸し出し金の引き上げに走ったのです。このためにどれほどの中小企業が苦労したことでしょう。
さて、そんな暗黒の時代をすごし、やっとつぶされる心配がなくなった最近では、打って変わって収益力が銀行の評価に変わりました。
そしていきなり「融資を増やし始めた」のです。
(この辺が雨の日に傘を奪い、晴れの日傘を貸すといわれるゆえんです^^)
現在の銀行は、いろいろな金融派生商品やら、手数料稼ぎやらの新しい収益源の開発も行っていますが、基本的には融資をして金利を稼ぐのが伝統的に銀行の生業です。そして金利は365日、何もしなくてもしっかり稼いでくれる天下の宝刀でもあるのです。
今まで貸しはがしをした企業にも、またお金を貸し始めた銀行は収益が上がり始めます。そして決算。後ろ向きだったバブル以降、やっと前向きに収益を稼ぐための行動を起こし、そして結果を出した銀行内は湧き上がります。改めて融資を受けた企業にしても、「あの時はひどかったじゃないか」と、皮肉のひとつも言いますが、それはそれ、ビジネスの世界で銀行融資は欠かせませんから、銀行の姿勢を許します。
しかし決算が終わった後、銀行の幹部は言います。
「暗黒の時代をみんなで乗り切った我々は、いよいよ打って出るんだ。後ろ向きな日々よさようなら、前向きなバンカーとして日本を支えるんだ!」
そして対前年度120%の収益計画。「ええー」と行員は思いますが、最悪期から脱したばかりですから、まだ市場はこれからです。「がんばってみるか」とまた一年がんばります。
そして決算。計画達成です。そしてまた行内は沸きあがり、安くなったボーナスが元に戻り、閉鎖ばかりしていた支店がまた増えだします。支店が増えるということは、ポストが増えることでもあり、行員は将来の希望も見えてきました。そんな中で新しい経営計画が発表されます。対前年度120%の収益計画。
おととしはまだ良かった。去年もまだ良かった。でも今年は・・・・・・・・・・・。
金融庁の検査はまだきつく、経営状態の悪い中小企業にはお金を貸せません。新製品も売れるところには売ってしまいました。毎年毎年上がるノルマをこなすには、何をすればいいのか?
貸し出し金は毎年何十億と増やさなければなりませんが、返済された分がへるので実質去年の倍の融資をこなさなければならない現実を突きつけられたとき、小口の融資をいくらしてもまったく計画に届かないことに呆然とする銀行マン。
そんな時、分譲や開発をしている不動産会社がターゲットになるのです。不動産会社の開発計画に対する融資は基本的に計画時に実行されます。書類だけで融資が実行できるのです。その規模はほとんど億単位であるために、簡単にノルマをこなすことが出来ます。
しかし、その融資は短期(一年以内)がほとんどであるため、今年のノルマはこなせても来期には返済されてしまいます。来年また新たな融資しなければ、何倍もの他の融資を獲得しなければならないのです。
そしてまた一年が過ぎます。またもや対前年120%の利益計画。もう三年前に比べると3倍もの融資を獲得するしかありません。しかし一度不動産開発融資にその数字を依存してしまった銀行は、他の細かな案件をいくら獲得したとしても、計画を達成することは出来ないほど不動産融資に依存しています。
その結果、だんだん融資の基準が緩んできます。(ええい、俺だけじゃないだろう。赤信号みんなで渡れば怖くない。)とみんなが思いはじめ、目先のノルマをこなすために「とにかく開発案件があれば、当行がご融資します。」と現場で営業マンが押し込むようになります。そんな話を何回か聞いた不動産会社は、高めの物件でも、とにかく早めに売ってしまえばなんとかなる、自分だけはババを引かないと考え始めます。しかし、そんな風に銀行にもちかけられているのはその会社だけではありません。そんな時、本来行き過ぎた取引を制御する役目の銀行の審査部でさえ、定年間近になった役員や上司が、今月、来月の成績に躍起になり始めたことを感じ始めます・・・・・・・・・・・・・・・・・
ちょうどその頃、なぜかあまり業績の良くなかった中小企業も業績が回復してきます。不動産業界が日本全体の景気に与える力が大きいからです。しかしその実態は、緩んだ経営計画と緩んだ審査によって成り立った好景気です。
「どうかな。2000万円ほど融通できないかな?」
「結構です融資させていただきます。」
社会全体の好景気に持ち上げられるように業績が良くなった中小企業は、要注意先からなんとか融資対象先に格付けが上がります。
やっとうちの会社も銀行が振り向いてくれる会社になったと喜ぶ中小企業の社長。久しぶりに出た利益を税金で失いたくないので、銀行融資で設備投資を行います。せっかく新しい設備が入っても、使う社員がいなければ宝の持ち腐れですから、社員を雇います。そんな会社が増えた結果、失業率が下がります。その為新しい社員がなかなか獲得できなくなります。仕方がないから募集する給与基準を上げます。新人を上げるためには、今まで安月給で我慢してもらっていたベテラン社員の給与も上げなければなりません。
給与が上がり、会社の売上が上がり、新しい設備を導入した中小企業の会社内は盛り上がります。生活に自信を持った社員は家を買います。家具を買います。車をローンで買います。そして会社はどんどん成長戦略を立て、新しい仕事に取り組み、新たに銀行融資を受け、社員を雇い、給与を上げます。日本のサラリーマンの90%以上を抱える中小企業はよみがえったのです。
銀行が不動産会社に対する融資をカバーするために、どこでも良いから融資されているとも知らずに・・・・・・・・・・・・・
そしていつか不動産物件が売れなくなったとき。これらの循環が突然止まります。


Posted by 金丸 : Comment(0) | 2007.2.28.

先日不動産データ&ジャーナル誌を見ていたら、「あーあ、やっぱりな」と思うデータが紹介されていました。
「不動産業戦略 2月号」
大京の今期中間決算数字(全取引に占めるネットの割合) 
マンション分譲 ネット成約率 約55%
仲介物件に占めるネット成約率 約30%
東急リバブル中間決算(全取引に占めるネットの割合)
売買仲介 ネット成約率 約12%  賃貸仲介 ネット成約率 約19% 
販売受託 約29% 
このデータから読み取れることは、リバブルさんがネットが苦手だとわかったことじゃなくて(笑)、大京では仲介より早く、分譲におけるネット成約率が高くなっていること。それと販売受託が、いよいよ本格的にネットから取れるようになってきたということです。
インターネットの特性を考えると、どうしてもそうなっちゃうはずなんです。
インターネット時代とは、①探して②調べて③比べることが「無料で簡単」に出来るようになった時代です。
探すことの代表がGoogleだったりYAHOOだったりするのですが、このステップでビジネスを行おうとする企業はお金をもらうのに苦労します。だって皆さん、誰かに何か探してもらった時にお金を払いますか?お礼は言うけどお金は払わないでしょう。そのためこれらの企業は、サービスを利用するお客様からではなく、広告から収益を得るようになります。
それでは探すだけでなく、調べるステップまで進めたビジネスモデルはどうでしょうか?これも実はお金を稼ぐのに苦労します。調べることは言い方を変えれば「データを見る」ことだったり「データを読む」ことです。
もう少し技術的に言えば、「データベースにアクセスする」ということになります。このデータベースは開放されたとたんに、お金が取れなくなります。
ではなぜ開放されてしまうかというと、データベースを作り上げることに、コストや手間がかかるため、自分で作らず一般から広く情報を集めるからです。一般から広く集めたデータを、運営会社が自社の収益のために使ったら、そりゃデータを提供した消費者は頭にきちゃうじゃあありませんか。(不動産業界だけは、お人よしの人が多くて、頭にこないようですけど・・・・・)
ウィキペディア(インターネット上の百科事典)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
ユーチューブ
https://www.youtube.com/
などがこれにあたります。
これらのコンテンツは、やはり広告に収益を頼ることになります。
一方、一般から広く情報を集めず、自社で莫大なコストをかけてデータベースを構築し、それをクローズの世界で提供すれば、お客様からお金をもらうことが出来ます。
一般にはあまり知られていませんが、たとえばお店を出店するときのマーケティングに使うデータベースがあります。
このデータベースはその地域と業種を入力すると、ライバルの数、年代別人口などが人目でわかるようになっていて、マーケティングを行う上で大変重宝がられています。そのデータは日々更新されていなければ価値がないので、苦労して現地調査を繰り返し更新され続けています。そのためにお金がもらえるんですね。自分でやったら相当大変だと、お客様がわかるからお金を払うんです。
東京カンテイの、マンションデータベースなんかもこれにあたります。
さて、それでは、探して、調べて、比べるステージまで進んだビジネスモデルはどうなるのでしょうか?
これが当社の提供している@dreamのコンセプトなのですが、比べられて選ばれることが出来れば、収益を得ることが出来ます。
「この不動産屋で契約したい」とお客様が思ってくれれば、当然手数料が入ることになるということなんですが、ここでひとつ気をつけなければならないことがあります。
それが、今回のデータに現れているのです。(前フリ長くてすいません)
家捜しをしている消費者は、インターネットで物件を探し、たくさんの物件を見ながら地域の相場がわかり(調べる)、だんだんと物件を絞り込んできます。そして結局買う物件は「ひとつ」だということです。
@dreamは共同仲介という不動産業界特有のルールが、インターネット時代にどう影響されていくのかを研究して、発展してきました。しかし、大京のようなマンションデベロッパーの物件を「選んだ」消費者は、直販であるためにこのルールから逸脱したところで行動してしまうのです。
つまり共同仲介というルールの中では、物件の情報を収集する「苦労」を「自社ホームページ」で公開することが「苦労して作り上げたデータベースを、クローズした環境で提供する」という、お金をもらえるビジネスモデルになりますし、その情報の「提供の仕方」が、「比べられる」ことによってやはり収益に結びつきます。結びついた収益を、さらに追客することによって、顧客化し紹介やリピーターの発生も促せます。
ですが最後に消費者が買うのは一軒です。その一軒が比べることが出来ない(直販)ときにはこのメリットが半減してしまうのです。
「お客様は物件を選んだあと、不動産会社を選ぶようになる。」がインターネット時代の完成形だということが前提の理論ですが、大京の物件を選んだ消費者は、不動産会社を選ぶことが出来なくなるので、物件を選んでもらえさえすれば、必ず契約に結びつけられます。
それが原因で大京の分譲におけるネット契約率が上昇しているのです。
しかし、仲介におけるネット契約率はまだそこまで行っていません。これは@dreamがないからでしょうか(笑)
一方リバブルの販売受託29%は、また別のインターネットの影響を現しています。
歴史を振り返ってみると、@dreamを発売した2001年当時、不動産業界におけるネットの影響といえば、賃貸仲介がネット化された時代だったといえます。
2003年には、賃貸仲介の中でも居住用だけでなく店舗・事務所も。2004年には売買仲介もネット化され始め、2005年にはHPだけでなくメールによる追客が効果を出し始めます。メールの効果が出てくると同時に、携帯でのHP、追客も効果を出し始め、2006年には紹介客やリピータを大量に発生させることになりました。
そんな中でひそかに進んでいるのが、家主さんオーナーさんのネット不動産への評価の高まりです。
2004年位から、東京の品川あたりの管理会社が「ネット対応していない仲介会社には10万以上の物件はもう流さない。」と言い始めていました。
「どうしてですか?」
「だって10万以上の物件に入る人で、インターネットで物件を探さないお客さんなんていないもの。ネット以外でくるお客さんは、ほとんど入居審査に通らない人なんだよ」
同じ頃、「うちの会社はホームページから専任を取ることが出来るようになったのが、@dreamを導入した最大のメリットだよ」という会社も現れています。
実はホームページを一番見るのは、家主さんだったり、同業者だったりするものです。我慢に我慢を重ねていた家主さんたちが、とうとうホームページを見ながら、販売依頼先を選別するようになったということです。
すでにリロケーションは完全にネット化されていますし、仕入れがネット化されるといよいよすべての業務のネット化が完成します。
さて現在リバブルさんはそのネームバリューが利いて、たくさんの依頼がいただけているようですが、仲介実績12%ですから(笑)。今にここから、街の不動産会社に依頼が流れてきます。
そのとき、完全に業界の価値観はインターネット基準となり、本当の勝負が始まるはずです。本当の勝負はたぶんまだ数年先です、しっかり今の業務を続け、そのときにみんなで勝ち組になりましょう。


Posted by 金丸 : Comment(6) | 2007.2.10.

石田禮助の生涯
私は20年前までの城山三郎氏の本は、すべて読んでいると思います。
彼はビジネス小説の第一人者で、(現在の第一人者は高杉良さんでしょう)、たくさんの名作を残していますし、テレビなどでドラマ化されている作品もたくさんあります。
若い頃、零細企業に勤めた私にとって最大の悩みは、社会に触れられないということでした。朝から晩まで工場の中で油にまみれて仕事をしていましたし、休みもあまりありません。たまに誰かと飲む機会といえば、商工会工業部主催の何とか勉強会と称する飲み会。飲み会のあとはスナック。そこにいるのは古い機械となったおば様たち。いつも同じメンバー、いつも同じ店。
「若い頃はそんな風に世の中に挑戦するみたいなことを言っても、人間ってものはだんだん年を取るたびに世の中がわかってくるんだよ。俺だって若い頃は君みたいに挑戦する気持ちだったんだよ。まあ今にわかるよ。」
(そんなのわかりたくありません。)とは思ったのですが、仕事は納期に追われ、勉強どころか住んでる街を出ることさえ稀な生活をしていました。
そんな忙しい生活の中で私はだんだんあせってきました。(このままではどんどん世の中から遅れてしまう。)そしてその対策として選んだのが「経済小説」だったのです。
勉強、勉強だらけの本なんか読むのはつらいし、面白いだけの小説を読んでもこのあせりは消えない。経済小説ならその両方がカバーできると考えた20代前半の私は、とにかく読みまくりました。城山三郎氏以外にも、落合信彦清水一行柳田邦夫ジェフリー・アーチャーなどです。
夜中にうちに帰ってから焼酎を飲み、吐きながら本を読む現在の読書スタイルは、この頃完成したようです(笑)
さてそんな中今回ご紹介するのは、「粗にして野だが卑ではない」という第5代国鉄総裁石田禮助(れいすけ)さんを描いた小説です。
淡々とした文章で、あまり感情が入らないスタイルは、前回紹介した「日はまた昇る」と共通するようですが、この小説の場合は主人公のキャラがものすごくたっていることが作者にそうさせたように思います。
一橋大学を卒業して、三井物産に入った石田は、海外の支店長を歴任して最後は代表取締役にまで上り詰めます。そこですっぱり仕事をやめ神奈川県の国府津というところで農業をしながら、生活をしています。
三井物産時代にはその笑顔を見たことがない、という部下がたくさんいるほど厳しい人でしたが、正直でうそをつかないその性格や、生活ぶりのせいでみんなから慕われる存在でした。
その石田が70歳を過ぎて、財界人の誰もが嫌がった国鉄総裁を引き受けます。政治家にたかられ、日本最大の労働組合を抱え、それでいて経営のほとんどを法律で縛られていた当時の国鉄総裁は、ただ袋叩きに会うポストでしかなく、財界では誰も引き受け手がなかったのです。
石田は生涯の最後は「パブリック・サービス」(社会貢献)をしたいとかねがね思っていて、その職を引き受けますが、かといって自分の信念を曲げることはありませんでした。小説の題名にもなった、「粗にして野だが卑ではない」という言葉がそれを表しています。

国鉄総裁として初登院をした石田は、背筋をピンと伸ばし、代議士たちを見下すようにして、「諸君」と呼びかけ、彼らの度肝を抜いた。
石田は別に奇をてらってそうしたわけではない。
さらに、「嘘は絶対につきませんが、知らぬことは知らぬと言うから、どうかご勘弁を」と切り出し、「生来、粗にして野だが卑ではないつもり。ていねいな言葉を使おうと思っても、生まれつきで出来ない。無理に使うと、マンキー(野猿)が袴を着たような、おかしなことになる。無礼なことがあれば、よろしくお許し願いたい。」と断った上で、
「国鉄が今日のような状態になったのは、諸君たちにも責任がある」と言い放った。

現在の日本を作り上げた、先人たちの生き様を、みなさん是非参考にしてください。


Posted by 金丸 : Comment(4) | 2007.2.4.